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視野と中心視
見る能力の限界
自動車を運転しているときに得られる情報の約90%が、視覚情報であるといわれています。
だから見ることは安全に運転する上で非常に大切なことであり、運転中に携帯等の違反行為の罰則を厳しくするなどの対策がとられています。
一方で自分自身の見ることに対する能力を知っておくことも、より多くの視覚情報をとっていく上で大切なことであり、今回は人間の視野に関することを考えていきたいと思います。
視野と中心視
「視野」とは私達が目を動かさないで見える範囲の事をいいますが、いったいどのくらいあるのでしょうか?
皆さんも実際に一点を見つめ、どの程度まで見えているのかを体験してみてください。
感覚的に「真横までは見えてないかな…」という程度、見えているのではないでしょうか?
筆者が学んだことや情報を調べていく中で、人間の視野は静止状態であれば、両目で左右に約200°、上下に約120°の広がりを持ちます。
個人差はあると思いますが、左右に180°以上見えているとこに驚かされます。
これだけ広ければ、ちょっと目や顔を動かせば、なんでも見える!
という発想に結びつきそうですが、標識などの重要な情報は中心視で見なければハッキリ読み取れません。
この中心視は視野の中で最も感度の高い範囲をいい、約1〜2°と言われています。
私達が健康診断などの視力検査で計測している視力は、この中心視で測られています。
中心視野と周辺視野
普段、私達が車を運転しているときは、前方をしっかりみつつ、その周囲がぼんやりと見えている感じだと思いますが、その前方をしっかりと見ているという範囲は、解像度が高く細かな違いを判別できる範囲で「中心視野」といいます。形や色がはっきりと見えます。
中心視野の外側でぼんやりと見えている範囲は、解像度が低く、大まかな動きの判別ができない範囲で「周辺視野」といいます。
ものの形や色は明瞭ではなく漠然と見えていますが、動きを感知することはできます。
前方を見ているのに、ルームミラーやサイドミラーに何か写ったと感じ取れるのも、周辺視野が動きを感知することが得意だからです。
私達が車を運転しているときは、歩行者や信号・標識など、中心視野で詳細な情報を入手しつつ、周辺視野で大まかな状況を把握しながら運転をしていますが、周辺視野で認知した歩行者や他車などは、目や顔を動かすことにより中心視野に持ち込み、より詳細な情報を得ることによって安全な判断を行なっています。
運転速度と視野の関係
速度が上げれば上がるほど、人間の視野は狭くなりますが、どれくらい狭くなるのでしょうか。
また、普段速度を出して走行されることが多い方は、どの程度、周りが見えないと感じているでしょうか。
具体的な数値としては下記の通りです。
・時速40kmで走行した際の視野は約100°で静止時の約50%
・時速70kmで走行した際の視野は約75°で静止時の約40%
・時速130kmで走行した際の視野は約30°で静止時の約15%
路上を時速40km程度の速度で走行することは、よくあることだと思いますが、今、視野の右側や左側にぼんやりと見えているものも、時速40kmでの走行時の視野だと認知できない可能性があるということになります。
また、運送会社によっては、交差点の右左折時に横断歩道の手前で一時停止による確認を実施しています。
動体視力によるヒューマンエラー防止もありますが、停止しての確認が一番広い視野で確認でき、歩行者の見落としや巻き込みによる人身事故防止には効果的だと考えられます。
知識を活かすことが大切
これまでのことを踏まえ、企業ドライバーとして今後の運転に活かしたいことは、
1、停止しての確認することが視野が広いということは、見通しの悪い交差点の確認や車庫入れ等の後退時や後退中の確認は停止して行うことが最も広い視野で確認を行うことができる
2、速度を出すことは視野を狭め見落としの原因となるため、時間に追われるなどの外的要因があったとしても、安全な速度の選択をミスしてはいけない
といったことを今後の運転の役立てていくことができます。
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