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バック考察
前号まで全4回にわたりお届けした「個癖」シリーズはいかがだったでしょうか? 弊社の安全運転研修では、もれなく受講者の皆さまへ事前・事後のアンケートへのご回答をいただいています。
事前アンケートの内容は、主観でつける自己評価点と記述式の設問とで構成されています。
回答を見てみると、自己評価点の高さとは裏腹に「バック」(以下、後退)に対する自信のなさが記述されていることが多いことに気付きます。
今回は、来たる8月9日=バックの語呂合わせにちなみ、多くの初心運転者が苦手と感じている「後退」について考察していきたいと思います。
後退が難しいと感じる理由
後退が難しいと感じる理由は人それぞれにあると思いますが、一般的に考えられる物理的な要因とそれらが及ぼす心理的な要因を2大要因として、以下に解説いたします。
1.ハンドル操作の感覚の違い
後退時は前進時と異なり、ハンドル操作の結果が車両の挙動として敏感に表れます。
そのため、ドライバーは少しの操作で車の向きが大きく変わる感覚におそわれます。
これにより走行の安定性が低下し、“難しい”と感じます。
2.視界の制限によるストレス増
後退時は前進時以上に視界が限られており、明らかに死角が多くなります。
死角が多いと、ドライバーの運転に対する不安やストレスが増します。
ストレスが増す → 走行の安定性が低下する
この悪循環によりドライバーは益々後退を“難しい”と感じるようになります。
教習所での後退の練習機会
免許取得時の指定自動車教習所での練習機会は、現行制度では一般的に第1段階で基本を学び、第2段階で方向変換や縦列駐車の方法を学びます。
最短で教習所を卒業した場合、後退や駐車の練習時間は合計で約2時限(100分)程度となります。
しかも、決められた環境、決まった車両です。
後退に限ったことではありませんが、練習時間が短いことと練習環境が限定的であることを考慮すると、免許が取得できたとしても自信が持てないことの方が自然と言えそうです。
後退事故の主な要因と対策
免許を取得すると、自信のあるなしに関わらず後退を避けることはできませんし、交通に参加する以上、事故のリスクも避けられません。
後退事故は行動区分における割合が高いことも特徴ですが、その主な要因は4つの要因に集約できます。
以下に、4つの要因とその対策について解説いたします。
1.死角の不認知
死角に潜む障害物や歩行者の見落としですが、そもそも死角の範囲を認知できているでしょうか?
ぜひ一度、車両を降りて「見えなかった場所」を目視してみてください。
二人組で、パイロンや背の低い障害物を人に模して実験する方法をお勧めします。
2.速度の出し過ぎ
速度が出るのはアクセルの踏み過ぎですが、後退時の推奨速度をご存じでしょうか?
徐行です。徐行は時速の定義こそありませんが、教習所ではおよそ10㎞/h以下と伝えています。
まずは10㎞/h以下の低速走行を、然るべき走行シーンでキープできるようになりましょう。
3.車両感覚の乏しさ
車両感覚の乏しさには2種類のタイプがあります。未熟タイプと過信タイプです。
いずれも障害物との距離を見誤り、事故に至ります。
トレーニング方法の一つとして、傷がつかない素材の障害物(例:空の段ボール箱)を用意しておき、障害物までの定めた距離を狙って車両を動かすという方法などが挙げられます。
4.焦りと注意の散漫
「急いで駐車しようとした」「着信に気を取られた」等、時間に追われたとき周囲に気を取られたときに事故は起こしやすくなります。
「運転に集中して」とは良く聞くセリフですが、これでは不十分です。
「10分早く出発する」「電源は切っておく」など、具体的な行動に移して対策をとったと言えるでしょう。
また、これらの実行には組織的な理解とバックアップが必要です。
今回は、多くの初心運転者が苦手と感じている「後退」について考察してきました。
最新の車両はアラウンドビューモニターや衝突回避システムなど、運転をサポートしてくれる機能が格段に進化しています。
それでも事故を防ぐ主体と責任はハンドルを握るドライバーにあります。
8月9日のみならず、365日後退による事故ゼロで居続けられる運転を目指しましょう。
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