『横断歩道アンケート』に見るドライバー心理

前号のコラムでは、「信号機のない横断歩道での車の一時停止率」(JAF)の全国調査結果に触れ、安全運転の実態について考えてきました。

今回は、過去に実施された横断歩道に関連するアンケート資料を掘り下げ、そこから見えてくるドライバーの心理について考えてみたいと思います。

横断歩道で停まらないドライバーの言い分

JAFは参考データとして、2017年に実施したアンケート調査の結果をHP上で公開しています。
当該調査は毎年実施しているものではありませんが、一時停止率の現状から察するに、ドライバーの意識は今も昔もさほど変わってはいないのでしょう。
アンケートの設問は7問あります。ここでは、第1問目の設問および回答に注目したいと思います。

Q.「信号機のない横断歩道に歩行者がいる場合にドライバーが一時停止しない状況や、一時停止したくてもできない状況にはどのような理由が考えられると思いますか?」

A. 回答率
①自車が停止しても対向車が停止せず危ないから 44.9%
②後続から車がきておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから 41.1%
③横断歩道に歩行者がいても渡るかどうか判らないから 38.4%
④一時停止した際に後続車から追突されそうになるから 33.5%
⑤横断歩道に歩行者がいても譲られることがあるから 19.9%
⑥自車が停止した際に後続車からあおられるから 12.6%
⑦自車が停止すると後続で渋滞が起きてしまうなど、後続車等に申し訳ない気持ちがあるから 12.0%
⑧一時停止することが面倒だから 8.9%
⑨先に横断歩道があることが判りにくいから 7.6%
⑩何も考えていない 5.2%
⑪そもそもこのような場面で歩行者優先だったということを知らなかった 4.2%
⑫警察が取り締まりをしていないから 3.7%

※回答は最大3つまで選択可(回答率の合計は100%ではない)

一見「仕方がない」と思えそうな回答ばかりですが、横断歩道に歩行者がいる場合は停止するのがルールです(道交法第38条)。
つまり、どの回答を選択しようともそれはドライバーにとって都合のよい解釈をしているだけ…ということに気付けるといいですね。

横断する歩行者の立場になって思うこと

それでは一転歩行者となった場合に、これまでハンドルを握っていた人は何を思うのでしょうか?
たいへん興味深い設問とその回答を見ていくことにしましょう。

Q.「あなたが歩行者の立場になってお考えください。信号機のない横断歩道を渡ろうとしたところ、車が来て不快や危険な思いをしたことがありますか?」

A. 回答率
①通過する車が途切れるまで渡れなかった 67.9%
②いつも車が通り過ぎるまで待つので、不快や危険な思いをしたことがない 21.8%
③車が一時停止せず衝突しそうになった 19.0%
④ドライバーが歩行者と意図的に目を合わせない 15.3%
⑤子供が手を挙げて渡ろうとしていても、無視されていることが多い 13.8%
⑥横断歩道を渡ろうとしたら、クラクションを鳴らされた 13.1%
⑦車が停止するのではなく、逆に急加速してきた 9.8%

※回答は最大2つまで選択可(回答率の合計は100%ではない)

回答者の7割近くが、通過する車が途切れず不快または危険な思いをしていることがわかります。
それにもかかわらず、自分自身のルール違反は許容し正当化してしまいます。
②については諦めた先の境地でしょうか…ドライバーの立場に戻った時に、同様の回答を歩行者へ押し付けていないことを願います。

ドライバーの要求

それでは、誰が何をすれば車は横断歩道の手前で停まるのでしょうか?
次の設問と回答は、ドライバーが考えるドライバーと歩行者の両方に対する解決策です。

Q.ドライバーがどのようなことを実践すれば、歩行者は安全に横断歩道を渡れると思いますか? 歩行者がどのようなことを実践すれば、ドライバーは一時停止してくれると思いますか?

A.
ドライバーに対して 歩行者に対して
①ドライバーが歩行者をしっかりと確認した上で、手を差し伸べるなどジェスチャーする ❶歩行者がドライバーを見て、手を挙げるなどジェスチャーする
②横断歩道手前では「まず減速する」等の提言をドライバーに啓発する ❷歩行者の横断する意思がドライバーに伝わるように、歩行者は「歩道の道路寄り側」に立って待つようにする
③歩行者優先を意識させるマナーアップキャンペーンを実施して啓発する ❸横断旗等を使う
④免許取得や更新の際に講習を通して周知徹底させる ❹歩行者が強引に渡り始める
⑤ドライバーへの取り締まりを強化する その他

まず、ドライバーに対する策ですが、これはつまり自分自身への戒めということでしょう。
①であれば、歩行者は安心して横断歩道を渡ることができそうですね。
②以下は「全国交通安全運動」の折りに、既に実施されているものばかりです。
気になるのは、他人任せという点にあります。

一方で、歩行者に求める策はいかがでしょうか?
どの回答も一理ありそうですが…
もし正解があるとすれば、「何も求めない」ということのような気がします。

今回は、過去に実施された横断歩道に関連するアンケート資料を掘り下げ、そこから見えてくるドライバーの心理について考えてまいりました。
あらためて見てみると、ドライバーがいかに自己中心的であるかということがうかがえます。
これは、車という移動手段がプライベート空間であることに起因するのかも知れません。
故にハンドルを握っている間、私たちは常に自分を律せねばなりません。

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