視力障害と道路交通法

10月15日は“白杖の日”です。世界盲人連合が1970年に制定した記念日です。
白杖を必要とする人は自動車を運転しませんが、運転免許取得者の視力障害が免許所得後に進行することは十分に考えらえます。
周囲がぼんやり見える、あまりはっきり見えない、昼や夜によって見え方や視力が異なるといった症状が思い当たる方は要注意!
ということで、今回は“白杖の日”にちなみ「視力障害と道路交通法」について詳しく見ていきたいと思います。

視力障害者の交通における課題

視覚障害者が交通において直面する課題は多岐にわたりますが、歩行時の安全性は生死に直結します。
視覚障害者は歩行中に障害物や車両を避けるのが難しいため、事故のリスクが高まります。
特に、音響信号機や視覚障害者誘導用ブロックが整備されていない場所では移動が困難です。
近年においては、GPSやスマートフォンアプリなどの技術的支援が進んでいるものの、これらの技術を使いこなすためには教育やサポート、地域格差の是正など課題は山積しています。
社会全体の理解と協力が必要であることに間違いはありませんが、まずは運転者個人ができることとして、歩行者は健常者ばかりでないことを意識することから始めましょう。

道路交通法における視力要件

運転者の立場で視力障害者を護る一方で、運転者自身の視力も加齢とともに低下していきます。
以下は、道路交通法における主要な免許の視力要件です。

普通免許(第一種)

・両眼で0.7以上、かつ一眼でそれぞれ0.3以上
・一眼の視力が0.3に満たない場合や一眼が見えない場合は、他眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上であること

大型免許、中型免許、準中型免許(限定なし)、けん引免許、第二種免許

・両眼で0.8以上、かつ一眼でそれぞれ0.5以上
・深視力検査も必要で、三桿法の奥行知覚検査器で2.5メートルの距離で3回検査し、その平均誤差が2センチメートル以下であること

深視力と視野角

深視力とは、物体の奥行きや立体感を正確に判断する能力のことです。
車の運転中に他の車や障害物との距離を正確に判断するために必要です。
また、運転に必要な視野角は、運転者が安全に周囲の状況を把握するために非常に重要です。
両眼を使った場合の視野は、左右で約180度以上あります。
片眼の視野は、鼻側に約60度、耳側に約100度、上方向に約60度、下方向に約70度と言われています。
視野の種類は以下に分類されます。

・中心視野:物の形や色をはっきりと認識できる範囲で、視野の中心からわずか1~2度ほどの範囲
・有効視野:中心視野の周囲にあり必要なものを識別できる範囲で、左右に35度ほどの範囲
・周辺視野:有効視野の外側にあり形や色をはっきりと認識することは難しいが、動きを感じ取ることができる範囲

運転において視力が重要であることは言うまでもなく、視力が基準を満たさない場合は矯正することが求められます。

視力の変化に気づくサイン

日常生活において、以下のような場面に思い当たる節がある方は注意が必要です。

一般的な視力低下

・作業中に目の疲れやすさを感じるようになった
・物がぼやけて見えることが増えるようになった
・暗い場所だと物が見えにくくなるようになった

深視力の低下

・階段を昇り降りする際に踏み外しそうになることが増えた
・キャッチボールをする際にボールのキャッチが難しく感じるようになった
・駐車する際に他の車や障害物に接触しそうになることが増えた

視野角の低下

・周囲の人や物にぶつかることが増えた
・本やテレビ画面の端が見えにくくなった
・運転中に歩行者や他の車両が急に飛び出してくることが増えた

視力の衰えは日常生活に不便を感じるのみならず、運転においては重大な事故を招く恐れがあるため、早めに眼科を受診し適切な対策を講じることが重要です。

今回は“白杖の日”にちなみ「視力障害と道路交通法」について詳しく見てきました。
視覚障害は、先天性・後天性を問わず世界で約3,600万人の全盲者が、重度〜中程度者では約2億人もの人々がいる、という現状があります。
「他人の立場になって考えなさい」とはよく耳にしますが、視覚障害をもつ人の立場になって考えることができれば、横断歩道を警戒なしに突っ切る、一時停止を完全停止せずに進行するなどの運転ができるはずありません。
視力低下に対する自身の対策を含め、運転には大きなリスクと責任が伴うことをあらためて認識しましょう。

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