外国人ドライバーが増えると言う事

2025年8月11日

コラム

外国人ドライバーの採用が進む中で、日本社会および受け入れる企業が向き合わなければならない重要な課題がある。
それは、文化や習慣の違いから生じるリスクと、それに対して企業が果たすべき責任である。
人手不足の解消という即時的なメリットの一方で、職場環境や社会全体の安全性を損なわないための丁寧な対応が求められている。

交通に関する文化やマナーは国によって大きく異なる。

例えば、日本では「譲り合いの精神」や「暗黙のルール」によって成り立っている場面が多くあるが、それが通用しない場面が増えることで、現場に混乱が生じることも考えられる。
右左折時のウインカー操作、歩行者優先の判断、信号無視の許容度、さらには運転中の言葉遣いや態度まで、日常のあらゆる細部に文化的な違いが現れることは珍しくない。
こうした違いが、場合によっては事故の要因となり、ひいては企業の信頼を揺るがすことにもなりかねない。

また、日本語能力の問題も見過ごせない。

業務上の指示や緊急時の対応が十分に理解されなければ、現場での意思疎通に支障をきたす。
たとえ基本的な会話ができても、業務における専門用語や法的な用語まで理解しているかどうかは別の問題である。
もし理解のズレがあった場合、その責任は雇用する企業に重くのしかかる。
これは単なる「言葉の壁」の問題ではなく、安全と信頼の根幹に関わる重大な課題である。

したがって、企業が外国人ドライバーを採用する際には、単に人材を確保するという視点だけではなく、その人材が安全かつ継続的に活躍できるよう、教育・研修・生活支援のすべてに責任を持つ姿勢が必要である。
交通法規や業務マニュアルの多言語化、文化適応の研修、安全教育の徹底、日本語のサポート体制の整備――これらを怠れば、トラブルが発生したときに「知らなかった」では済まされない。
法的責任のみならず、社会的な信用の失墜にも直結する。

多文化共生の時代にあって、多様な人材の活躍は避けられない未来である。

しかし、その実現には相応の準備と覚悟が求められる。
外国人ドライバーの採用は「労働力の穴埋め」ではなく、新たなチームの一員として迎え入れる行為であり、企業はその人たちが安心して働ける環境を整える責任を果たさなければならない。
ドライバー不足の解決策であると同時に、異文化との橋渡しを担う重要な試金石となるのが、外国人ドライバー採用の本質なのである。